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節税は、法人と個人が別の人格であることを利用する。

なぜ、法人と個人(個人事業主)は別の人格なのか?

法人も個人(個人事業主)と同じで、人格を持っています。
預金通帳も法人名で作成できます。法人が車の購入をしたりローンを組んだりすることもできます。
法人の名前で契約を結ぶことができるからです。

なぜ、そんなことになっているのでしょうか?
例えば、個人の集まりがお金を出し合って会社を設立したとします。
一個人の名前でしか預金通帳が作成できないと、みんなで出し合ったそのお金は、その一個人の財産とみなされてしまいます。
また、取引先も特定の個人ではなく、その会社を信用して取引をしているので、その会社に入金しようにも困ってしまいます。
そうした問題を解決するため、個人とお金が集まる会社に人格を与え、「法人」として銀行と契約を結べるようにし、預金通帳を作成できるようにしているのです。

税金も同じで、会社を一つの人格として認め、その会社の利益に課される税金が「法人税」です(正確には、法人税、法人事業税、法人県民税、法人市民税です)。
役員や従業員に経費として給与や賞与を支払えば、当然その会社の利益は少なくなり、法人税も少なくなるわけですが、代わりに給与や賞与を受け取った個人に「所得税」と「住民税」が課されるといった仕組みです。
このあたりはうまくできています。

別人格を利用して節税をすることも可能です。

今は代表者一人でも、会社を設立することができます。
会社の利益をすべて代表者に給与として支払えば、会社の利益はゼロですから法人税もゼロです(実際には、利益がゼロでも、その会社の資本金などに応じて支払わなければならない税金が最低7万円~あります)。
そして、会社の利益分だけ給与を受け取った代表者は、所得税と住民税を納めることになります。
ちなみに、個人事業主の場合、事業の利益から自分(事業主)に給与を支払うことはできません(生活費であり経費にはなりません)。

ここで一つのギモンが生じると思います。ほぼ一人で事業を行っている場合で、2つの選択肢です。

  • 法人を設立する。そして法人から給与を受け取る。「給与」に対して税金。
  • 法人を設立しない。個人事業主として利益を上げる。「利益」に対して税金。

この「給与」と「利益」の2つが同じ金額である場合、課される税金は同じ金額でしょうか?

答えは、同じではありません。

個人事業主として上げた利益がある一定のラインを超えると、法人を設立して、その利益分を給与として受け取ったほうが、税金が少なくて済みます。
したがって、その一定ラインで法人化すれば、最も効率的に節税できることになります。

その詳しい仕組みは、また後日に。

領収書があればOK?

経費と領収書に関する誤解は多いので、まとめておきます。

「領収書があればOK?」

領収書があるからといって何でも経費になるわけではありません。その内容によります。
基本的に業務に関連しない支出は経費になりません。

「領収書がないので、経費にするのはあきらめる?」

領収書がないからといって経費にならないわけではありません。
預金取引は、請求書の保存と通帳への記録でOKです。
現金取引の場合、

  • 注文書、納品書、請求書、取引明細などを保存する。
  • その支出の内容がおおよそわかるもの、例えば、案内や広告などにメモして保存する。
  • その支出の日付、金額、内容(お店の名前、何に支出したか)などを詳細にメモして保存する。

などの方法により、経費にすることができます。
ですが、あまりに数が多い場合には怪しまれますので、やはり領収書がベターです。

「クレジットカードは、カード会社から送られてくる明細書があればOK?」

カード会社から送られてくる明細書は、カード会社が作成したもので、取引先(お店)が作成したものではありません。
また、明細書を見ても、お店の名前はわかりますが、品目(何に支出したか?)はわからない場合が多いです。
クレジットカードで支払いをする場合には、お店からカードレシート(領収書)を受け取り保存しましょう。

「まだ支払っていないので、経費にはならない?」

支払っていなくても、すでにモノが納品され使用されている、サービスが提供されている場合で、請求書などより支払いが確定していれば、経費にすることができます。

なお、消費税法では、請求書や領収書の保存が義務付けられていますので、現金取引の場合は領収書(レシート)の保存、預金取引の場合は請求書の保存、カード取引の場合はカードレシート(領収書)の保存を優先してください。

決算書をなぜ作るのか?その3

前回の続きです。

すべての企業は、

  1. お金を集め、
  2. そのお金を何かに投資して、
  3. 利益を上げます。

上の3つの活動を数字を使って表したのが、「決算書」です。

損益計算書

決算書の中の「損益計算書」を見れば、3つの活動のうち、「どのように利益を上げたか」を知ることができます。

損益計算書を理解するためには、5つの利益を押さえることが重要です。

売上総利益

「売上高」-「売上原価」=「売上総利益」です。
「売上高」は、商品などを販売して得たお金です。
「売上原価」は、商品などを販売するために、その商品などの仕入れに使ったお金です。
「売上総利益」とは、売値から仕入値を差し引いたもうけで、「粗利」とも呼ばれます。

営業利益

「売上総利益」-「販売費および一般管理費」=「営業利益」です。
「販売費および一般管理費」は、商品などを売買するために使ったお金です。
従業員に支払う給与や賞与、営業活動に使う広告宣伝費や旅費交通費、事務所や工場の水道光熱費や賃借料など、商品などを売買するためにかかった全てのお金が表示されます。
「営業利益」とは、粗利から、商品などの仕入れ以外の、売買に関連するすべての費用を差し引いたもうけで、本業でのもうけです。

経常利益

「営業利益」+「営業外収益」-「営業外費用」=「経常利益」です。
「営業外収益」は、本業以外で得たもうけです。例えば、預金の受取利息などが該当します。
「営業外費用」は、本業以外で出た損失です。例えば、借入金の支払利息などが該当します。
「経常利益」とは、本業でのもうけに、本業以外のもうけと損失を加味したもうけです。

税引前当期純利益

「経常利益」+「特別利益」-「特別損失」=「税引前当期純利益」です。
「特別利益」は、土地や建物などを売却して一時的に得たもうけです。
「特別損失」は、土地や建物などを売却して一時的に出た損失です。
「税引前当期純利益」とは、法人税などの税金を計上する前の、その企業の当期のもうけです。

当期純利益

「税引前当期純利益」-「法人税等」=「当期純利益」です。
「当期純利益」とは、法人税などの税金を差し引いた後の、その企業の当期のもうけです。

これらの5つの利益が何を意味するのかを押さえれば、その企業が「どのように利益を上げたか」を知ることができます。

決算書をなぜ作るのか?その2

前回の続きです。
貸借対照表の左側には、「資産の部」があります。
この左側をみれば、「そのお金を何に投資したのか」がわかります。

資産の部

この資産の部には、
まだ投資していないお金や商品やサービスなどに投資して回収したお金を表す「現金」や「普通預金」など、
商品や有価証券や固定資産に投資したことを表す「商品」や「有価証券」や「建物」や「機械」など、
投資した商品の販売やサービスの提供をしたが、まだお金が回収されていないことを表す「売掛金」や「受取手形」や「未収金」など、
が表示されます。

この資産の部を見れば、企業がどのような投資を行ったのか、その結果、現在どのような財産を保有しているのかを知ることができます。

貸借対照表のまとめ

「貸借対照表」はまず右側から見ます。
右側の
「負債の部」は、他人からのどれだけお金を集めたか(他人資本)
「純資産の部」は、自分だけでどれだけお金集めたか(自己資本)
を表示します。
続いて左側を見ます。
「資産の部」は、その集めたお金をどのように使ったのか(総資産)
表示します。
ですから、右側(集めたお金)の合計と左側(使ったお金)の合計は必ず一致(バランス)するのです。
このことから、貸借対照表はバランスシート(B/S)とも言われます。

決算書をなぜ作るのか?その1

「決算書」をなぜ作るのでしょうか?

答えは、企業の状況を知らせるためです。
正確には、企業の財政状態や経営成績を関係者に正しく知らせるためです。
関係者には、株主や債権者(金融機関)、経営者なども含まれます。

すべての企業は、

  1. お金を集め、
  2. そのお金を何かに投資して、
  3. 利益を上げます。

上の3つの活動を数字を使って表したのが、「決算書」です。

実際には、利益を上げること(だけ)が目的ではない企業もありますが、基本的に企業は「利潤の追求」をするものと考えます。
それは法人でも個人事業主でも同じです。

貸借対照表

決算書の中の「貸借対照表」を見れば、3つの活動のうち、「どのようにお金を集め」、「そのお金を何に投資したのか」を知ることができます。ちなみに「どのように利益を上げたか」は知ることができません。

貸借対照表の右側には、「負債の部」と「純資産の部」があります。
この右側をみれば、「どのようにお金を集めたか」がわかります。
貸借対照表の左側には、「資産の部」があります。
この左側をみれば、「そのお金を何に投資したのか」がわかります。

負債の部

この負債の部には、商品や固定資産に投資するため、「取引先などから集めたお金」を表す「買掛金」や「支払手形」や「未払金」、また、何かに投資するため、「金融機関などから集めたお金」を表す「借入金」などが表示されます。
「買掛金」や「支払手形」や「未払金」が「集めたお金」というのは少しわかりにくいかもしれませんが、取引先のお金でその取引先の商品や固定資産などを先に手に入れたという考え方をしてください。
この「買掛金」や「借入金」は、取引先や金融機関の資金を頼りにする、企業が他人から集めたお金です。
この他人から集めたお金を「他人資本」といい、いずれは取引先に支払ったり、金融機関に返済したりする必要があるお金です。
ですから、この負債の部の金額が必要以上に大きい場合には、資金繰りがうまくいっていない場合があります。

純資産の部

この純資産の部には、設立時や増資時に「株主などから集めたお金」を表す「資本金」、また、企業の営業活動を繰り返した結果、「集まった(もうけた)お金」を表す「利益剰余金」などが表示されます。
この「資本金」や「利益剰余金」は、取引先や金融機関の資金に頼らないで、企業が自分で集めたお金です。
この自分で集めたお金を「自己資本」といい、取引先に支払ったり、金融機関に返済したりする必要がないお金です。
この純資産の部は、会社がもうければもうけるほど金額も大きくなっていきます。
純資産の部を見れば、その企業がどうやって成長してきたかがわかります。

貸借対照表の左側の「資産の部」はまた次回に。

財務諸表を見るときのポイント

財務諸表を見るときのポイントをまとめてみました。

3つの財務諸表の基本的な見方です。

貸借対照表

負債の部と純資産の部(右側)から資産の部(左側)へと見ていきます。

負債の部と純資産の部

どのようにお金を集めたか?
負債の部は他人からの資金調達(未払いの債務残高)、純資産の部は自己(株主)からの資金調達を見ることができます。

資産の部

集めたお金を何に投資したか?
現預金の残高(投資されずにそのままのもの)、未回収の債権残高、株や固定資産に投資した金額を見ることができます。

損益計算書

どのように利益をあげたか?

  1. 売上総利益
    売上高から売上原価を引いた利益。粗利。
  2. 営業利益
    粗利から販売費や一般管理費を引いた本業のもうけ
  3. 経常利益
    本業ではない財務活動などを含めた利益
  4. 税引前当期利益
    臨時の損益を含めた利益
  5. 当期純利益
    税金を支払った後の利益

順に見ていきます。

キャッシュフロー計算書

現預金がなぜ増えたのか?なぜ減ったのか?

財務キャッシュフロー

株式の発行、借入れやその返済などから、現預金の増減を表しています。

投資キャッシュフロー

株や固定資産の取得や売却などから、現預金の増減を表しています。

営業キャッシュフロー

商品の売上や仕入などの営業活動などから、現預金の増減を表しています。

各財務諸表は上記のような視点で見ていくことが基本です。
このような視点で見れば、簿記がわからなくても、財務諸表の数字が何を表しているのかは理解することができます。

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