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どこまでが経費になるのか?

法人、個人問わず、税理士がよくされる質問に「どこまでが経費になるのか?」というのがあります。

ざっくりとした、抽象的な質問で「遠足のおやつはいくらまで?」と聞かれているような気がしますが、みなさん一番関心があるところなので・・・。

私はとりあえず「収入を生み出すために必要だった支払いが経費です。金額は決まっていません。」と答えます・・・。

・・・この時点で減価償却費が含まれていないことに気付いた人はさすがです。当然、減価償却費は経費になります。
また、この言い方だと、経費にならない土地の購入費用なども含まれてしまいます。
やはり一言で答えるのは無理がありますね。

個人事業主の場合、他にも、

  • 支払った金額の一部しか経費にならないものもあります。
    ・・・自宅兼事務所の地代家賃、電気代などの支払い。
  • 支払った相手によって、経費にならないものもあります。
    ・・・同一生計親族への地代家賃などの支払い。
  • 自分が支払っていなくても、経費になるものもありあます。
    ・・・同一生計親族から借りている建物の固定資産税や減価償却費など。

「事業主の昼食代は経費になりませんよ。」と言ったところで、取引先との会議も兼ねていれば経費になります。
どこまでいっても個別の回答、ケースバイケースになるんですね。

あえて一つの基準を設けるなら、「はたしてこの支出は、収入(売上)を生み出すために必要なものだったのか?」を考えてみてはどうでしょうか。

意外とすっきり判断できるものですよ。

事業主のポケットマネーで経費を支払ってはいけない?

事業主のポケットマネーで経費を支払ってはいけないのか?

答えは、「支払ってもよい」です。

「事業用の現金から支払わなくてもよいのか?」と聞かれそうですが、経費は必ず事業用の現金を使用して支払う・・・などという規定はありません。
法人についても、社長がとりあえず立て替えておいて、会社できちんと精算処理を行えば何の問題もありません。

個人事業主がポケットマネーで経費を支払った場合の処理は、その取引の記帳と領収書の保存でOKです。

例えば、消耗品をポケットマネー100円で購入した場合の仕訳は、

借方:消耗品費 100 貸方:事業主借 100
という仕訳になります。

この「事業主借」という勘定科目は、事業主が個人財産を事業に持ち込んだときによく使用します。
「現金で支払ったのに、何で「現金」勘定を使用しないんだ?」と思われるかもしれません。
でもポケットマネーは、「事業用の現金」ではないんですね。

この仕訳は、事業主がポケットマネー(個人財産)をいったん事業に持ち込み、直ちに消耗品を購入したと考えれば理解しやすいでしょう。

借方:現金 100   貸方:事業主借 100
・・・まずポケットマネーを事業用にして、事業用の現金が100円増加し、

借方:消耗品費 100 貸方:現金   100
・・・すぐに消耗品を購入し、事業用の現金が100円減少した。

実際に現金は動いていませんから、「現金」勘定を相殺(消去)すると、

やはり、借方:消耗品費 100 貸方:事業主借 100
という仕訳になります。

一方で法人の場合には、「事業主借」のような、ある意味便利な勘定科目はありません。
法人はそれ自体独立した人格ですから、きちんと精算処理を行い、会社は社長に立替分の現金を支払う必要があります。

社員・従業員を雇用した場合の手続き

社員・従業員を雇用した場合の手続きをまとめてみました。

労働基準法関係

  • 労働条件通知書(書面による労働条件の明示)
    雇用契約書が所定の内容を盛り込んでいれば作成不要。
    会社が作成 → 社員・従業員に通知
  • 法定帳簿(法定三帳簿)
    労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(タイムカードなど)
    会社が作成し、保管します。

税金関係

  • 扶養控除等(異動)申告書
    社員・従業員が作成 → 会社で保管
    最初の給与計算までに作成します。
  • 給与所得者の異動届出書
    転職先の企業が作成 → 市区町村役場に提出
  • 特別徴収切替依頼書
    会社が作成 → 市区町村役場に提出
  • その他税務署などへの届出
    給与支払事務所等の開設届出書
    源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
    などを提出していれば、特に必要な届出はありません。
    会社が作成 → 税務署に提出

社会保険関係

  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
    入社日から5日以内に年金事務所に提出します。
  • 健康保険被扶養者(異動)届
    社員・従業員に扶養家族がいる場合に提出します。
  • 国民年金第3号被保険者資格取得届
    社員・従業員の扶養家族に配偶者がいる場合に提出します。

雇用保険関係

  • 雇用保険被保険者資格取得届
    入社日から10日以内に公共職業安定所に提出します。

給与や賞与以外にも源泉徴収が必要?

給与や賞与以外にも源泉徴収が必要なものがあります。

  • 原稿、写真、デザインの報酬
  • 講演の報酬・料金
  • 弁護士や税理士などの業務に関する報酬・料金

などが代表的なものでしょうか。

いつ源泉徴収するのか?誰が源泉徴収するのか?

居住者(個人)に対し、上記のような報酬・料金を支払うときに、その報酬・料金の支払者(個人および法人)が源泉徴収しなければなりません。
法人に対し支払う報酬・料金について源泉徴収をする必要はありません。
未払いの報酬・料金について源泉徴収をする必要ありません。

その報酬・料金の支払者(個人および法人)に源泉徴収義務がありますから、受け取った請求書などに源泉所得税の金額が明示してあるかどうかは関係ありません。

「どのみち相手は確定申告するから、源泉徴収しなくてもいいですよね?」
と、よく聞かれますが、相手が確定申告するかどうかにかかわらず源泉徴収義務があります。

「うちは法人じゃないし、源泉徴収しなくていいでしょ?」
とも、よく聞かれますが、個人にも法人にも源泉徴収義務があります。

取引先の手取額が少なくなるとの理由ので、原稿料やデザイン料などの源泉徴収を嫌がる方がたまにいらっしゃいますが、法律で徴収し納付することが決まっているのでどうしようもないです。
後から源泉徴収していないことを指摘されたり、納付が遅れたときに課される不納付加算税がかなりきついです。必ず源泉徴収して納期限までに納付しましょう。

源泉徴収する金額は?

  • 原則として、報酬・料金の額×10.21%
  • 消費税を明確に区分している場合には、税抜金額を対象とすることができます。
  • 100万円を超える部分は20.42%

いつまでに納付するのか?

  • 原稿、写真、デザインの報酬、講演の報酬・料金など
    ・・・支払った月の翌月10日まで
  • 弁護士や税理士などの業務に関する報酬・料金など
    ・・・原則:支払った月の翌月10日まで
    ・・・特例:1月~6月分→7月10日、7月~12月分→1月20日

例外があります。

その報酬・料金の支払者が個人で(法人はダメです)、かつ、給与の支払者でない(たとえば、一人で商売をしていて従業員がいない)場合などは、ホステスなどに支払うの報酬・料金を除き、その個人は源泉徴収をする必要はありません。
くどいようですが、法人が支払者の場合に例外はありません。

以上、源泉徴収は、徴収義務者が誰なのか混乱する場合が多いのでまとめてみました。

住宅購入と税金

住宅購入と税金の関係についてまとめてみました。

次の場合には所得税に注意しましょう。

  • 自己資金+住宅ローンで購入する場合
    ・・・住宅ローン控除の適用があります。
  • 住み替え、買い換えの場合
    ・・・売却益から3,000万円を控除できます。
    ・・・税金がかからない買い換えの特例があります。
    ・・・売却損を他の所得から控除し、残りを繰り越すことができます。

次の場合には贈与税に注意しましょう。

  • 購入資金の一部は親から援助を受ける場合
    ・・・援助を受けた資金について、贈与税の非課税枠があります。
    ・・・相続時精算課税制度を選択することができます。
  • 夫婦や親子間で共同取得する場合
    ・・・持分割合の妥当性に注意してください。

親からの援助ではなく借入れによる場合には、次の点に注意しましょう。

  • 借用書(金銭消費貸借契約書)
    ・・・必ず作成してください。
  • 借入金額
    ・・・現実として返済不可能な金額の設定は、贈与とされる場合があります。
  • 借入利息
    ・・・市中金利を参考に、最低でも1%以上の利率にしましょう。
  • 返済の証明
    ・・・金融機関を経由する(振込依頼書の保存や通帳に記録される)方法により、返済実績を明らかにしておきましょう。

65万円控除は全ての元帳を作成することになる。

最近は手書きで記帳する人も少なくなりました。
65万円の青色申告特別控除は、仕訳が苦手で、かつ、手書き記帳される方には、ハードルが高いような気がします。

手書き記帳の場合、仕訳がわからないと「仕訳帳」が作成できないわけですが、会計ソフトによる記帳の場合には、入力フォームから自動で仕訳を作成し、「仕訳帳」に記入、元帳に転記してくれます。

「現金出納帳」、「売掛帳」、「買掛帳」、「経費帳」、「固定資産台帳」・・・これだけ作成すれば10万円の青色申告特別控除は受けられます。 これらの帳簿は、一応仕訳がわからなくても作成できます。

上記の帳簿に加えて、「預金出納帳」、「受取手形記入帳」、「支払手形記入帳」、「特定取引仕訳帳」、「特定勘定元帳」を作成し、「貸借対照表」を作成すれば、65万円の青色申告特別控除が受けられるよ。と国税庁は言っています。

ですが、この中の「特定取引仕訳帳」とは、要するに「仕訳帳」です。
まぁ、特定取引の仕訳数は「現金出納帳」や「経費帳」などを作成している分限定されますが、簿記の知識がない場合、特定取引の仕訳は強引に覚えて記帳する以外にありません。
特定取引仕訳とは、主に決算整理の仕訳で、例えば、棚卸資産(商品)、減価償却、未払金に関する仕訳などでしょうか。

また、「特定勘定元帳」とは、次の出納帳などを元帳とした場合に、それでも作成されない勘定科目の元帳ことです。

  • 現金出納帳≒現金の元帳
  • 売掛(売上)帳≒売掛金(売上)の元帳
  • 買掛(仕入)帳≒買掛金(仕入)の元帳
  • 経費帳≒必要経費の元帳
  • 固定資産台帳≒固定資産の元帳
  • 預金出納帳≒預金の元帳
  • 受取手形記入帳≒受取手形の元帳
  • 支払手形記入帳≒支払手形の元帳

例えば、棚卸資産や未払金などの勘定科目の元帳は、これらの中にはないので、新たに「特定勘定元帳」として作成します。

ですから結局、すべての勘定科目の元帳(総勘定元帳)を作らないと、65万円の青色申告特別控除は認めない。と言っているに等しいわけです。

取引の量が多くなると、仕訳帳や出納帳から元帳に転記するだけでも大変です。少々無理してでも会計ソフトは使用すべきですね。

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