必要経費

開業前の経費はどうしたらいいの?

個人事業主で、開業日までにかかった費用は、開業費として結果必要経費になります。

開業費は文字どおり開業のときにしか出てこないもので、計上方法などのポイントをいくつか。

  • この開業費は繰延資産とよばれるもので、いったん全額資産に計上します。
    その後、通常は決算で全額償却(必要経費)します。
    また、開業年に全額償却しないで、一部を翌年以降に償却することもできます。
  • 開業からどれくらい前までなら開業費として認められるのでしょうか?
    期日は特に決められていませんが、3年前というのはさすがに無理です。おおよそ1年ぐらい前までなら大丈夫でしょう。
  • 開業前の費用は、個人のお金で支払っている場合が多いです。まだ会社の現金はこれだけ、と決めていない場合も多いでしょう。
    そうすると「現金」という勘定科目が使えない場合もあります。

    • 開業費がある程度まとまった金額になった場合には、
      開業日に、資産:「開業費」と、資本:「元入金」で計上しましょう。
    • 少額(おおよそ10万円未満)の場合には開業費として計上しないで、
      費用:「旅費交通費」や「通信費」などの一般的な科目と、負債:「事業主借」で計上しても問題ないと思われます。
  • 開業費の中に10万円以上の減価償却資産(附属設備、機械、備品など)がある場合には、開業費に含めてはいけません。
    資産に計上し、減価償却により減価償却費(必要経費)を計上します。

ざっとこんな感じでしょうか。

同一生計親族に支払う家賃など

所得税の規定でいまいちピンと来ないのが、所得税法56条の「親族が事業から受ける対価の取扱い」です。

この規定によると、居住者(事業主)が同一生計の親族に支払う給与、賃借料、支払利息などは必要経費にならず、同一生計の親族側が給与、賃借料、支払利息などの支払を受けても、その収入(受取り)はないものとみなされます。
また、同一生計の親族が居住者の事業のために支払う賃借料、保険料、固定資産税や、居住者の事業に使用した同一生計の親族が所有する資産の減価償却費、資産損失などは居住者の必要経費になります。

ただし、給与については所得税法57条に例外規定があり、白色申告者は一定額まで、青色申告者は税務署に届け出ていれば適正額を必要経費にできます。

なんでこんなメンドクサイことをするの?と思うのが普通です。

配偶者や子が事業を手伝い、父母のお金や所有する建物を借りて事業を営むことは何ら不思議なことではなく、その対価である給与、賃借料、支払利息などを素直に必要経費とできれば済む話ですよね。

所得税の課税は、所得(もうけ)が一定額を超えると、その超えた部分により高い税率を適用する超過累進税率により行われます(例外あり)。ですから、実際にはまったく働いていないにもかかわらず親族に給与を支払ったことにしてしまえば(ダメですよ)、家族内で所得を意図的に分散させることができ、家族単位では納税額を少なくすることができてしまうので、この56条の規定はそのようなことを防ぐためだと言われています。

ですが、この56条の規定は昭和23年改正からあるもので、昔と今とでは家族形態も大きく変化しています。
さらに57条の「事業に専従」していないと給与として認めないというのは、現在の男女共働きの世の中、普段は他の会社の社員、パート、アルバイトとして働き、空いた時間に家業の総務や経理などをしても、その家業の労働の対価はないと言っているわけで、現代の労働の価値感するとおかしな感じがします。

ちなみに、同一生計の親族(生計を一にする親族)とは、居住者と「生活の資を共にする親族」という意味で、基本的に同じ家屋に起居してたり、居住者が仕送りなどをしないと生計が立てられない親族のことをいいます。ですから自立して別々に住んでいる親族の場合には、56、57条の規定は適用されません。

親族間での家賃と必要経費

大家さんがアパートの一室を子供夫婦に無料で貸している場合、大家さんはその部分の固定資産税や減価償却費などを必要経費にできるのでしょうか?

所得税法では、必要経費を「・・・総収入金額を得るために直接要した費用・・・所得を生ずべき業務について生じた費用・・・」と規定しています。

つまり、無料で貸している部分の固定資産税、減価償却費などは、家賃(収入)を得るための費用ではないので必要経費にならないということになります。

じゃあ、収入があればいいということで、子供夫婦から1円でも家賃を受け取っていれば必要経費にできるのでしょうか?

通常の契約では、貸している部分の固定資産税にも満たないような家賃の設定はありえません。これは大家さんが借りている子供夫婦の生活を助けるためにそうしていると考えるのが一般的で、家賃を得ることを目的としていないことから、やはり必要経費にはならないと思われます。

少なくとも、貸している部分の固定資産税以上の金額で家賃のやり取りをしないと、その部分の必要経費を計上するのは難しそうです。

また、無料で貸している相手が単に子供である場合など、寝起きの場所が異なるだけで同一生計の場合には、家賃のやり取りはないものとみなされ、居住用部分として固定資産税、減価償却費などの必要経費も計上できません。

ちなみに、空室であっても入居者募集の広告などを定期的に行っていれば、その空室部分の固定資産税や減価償却費は必要経費になります。

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